アンドリュー・ロウ著『10ステップでかんたん!魔王の倒しかた』作品解説(1)

訳者の長谷川珈です。この記事では、アンドリュー・ロウ著『10ステップでかんたん!魔王の倒しかた』(Audible オリジナル・オーディオ作品)の作品解説をいたします。今回は外形的な紹介にとどめますのでネタバレはほぼありません。

英語圏で2020年に公開されヒット作となったこの小説、日本でもオーディブル作品(朗読作品)として公開中ですが、残念ながらまだあまり、というかほぼ全く話題になっておらず、紙書籍版の出版に至っておりません。いやー言い訳ですが、海外作家の作品なので、ライトノベルの編集部に企画書を送ってもナシの礫なのです。私としては日本のライトノベル読者層に届いてほしいと思っているのですが、ライトノベルの編集者はふだん海外版権なんて扱わないでしょうし、そもそも新人賞以外の窓口がほぼ存在しません。ということは、ライトノベルのレーベルから発刊される望みはほぼない…? むむむ……

しかしながら作品を聴いて頂いた方々からは少数ながら熱烈な支持もいただいております。作品は本当に最高なのです! JRPG リスペクトでゲーム愛あふれ、複雑精緻な魔法システムにギミックいっぱいのダンジョン、考察の捗る謎に満ちた世界観、主人公たちの軽妙な会話で笑わせ、それでいてときにシリアス、ときに涙……こんな最高な作品ってあるでしょうか。少なくとも私は100回以上聴いたくらい惚れ込んだので思い切って著者と連絡をとり、訳させてもらい、日本でもオーディブル版のリリースに至りました。しかし何とかして紙書籍版の出版にもこぎつけなければなりません。私のブログはアクセス数10とかなので微力というにもほどがありますが、日本にもアンドリュー・ロウ氏の作品を広めるべく、訳者としてそしてなにより氏の大ファンの一人として、できるだけ紹介していこうと思います。

というわけで、作品をよいと思ってくださった少数の視聴者の方々に向けて情報提供するつもりで作品解説をしていこうと思います。まずは外形的な作品概要です。

◇作品概要(原著)

原題:How to Defeat a Demon King in Ten Easy Steps by Andrew Rowe
Audible版(英語朗読)2020年4月30日公開(Audible Originals)
Kindle版(英語)2020年11月1日発売(Amazon.com Services LLC)
分量:原文=A5用紙160頁(約50.000 words)
英文朗読: 5時間28分 朗読者:Suzy Jackson 及び Steve West

◇作品概要(邦訳)
アンドリュー・ロウ著『10ステップでかんたん!魔王の倒しかた』(長谷川珈 訳)
2021年11月20日公開(オーディブル・オリジナル)
訳文=A4用紙110頁(約14万字)
朗読:8時間14分 ナレーター: 水瀬真知(沢井真知)江田拓寛

特徴的なのは、本作品はもともと、アマゾン Audible でしか聴くことのできないオリジナル作品として特別に執筆され、紙書籍版の出版はその半年後であったことです。少なくとも私の知る限りでは、第一義的には朗読作品として書かれた LitRPG 作品(この概念については今後説明します)というのは相当に珍しく、もしかしたらこの作品が世界第一号かもしれません。
そして Suzy Jackson さんの朗読も素晴らしい! 英語リスニングが苦にならない方はぜひ英語版の方も聴いてみていただけたらと思います。

では次に、米国(というか英語圏)での評価について。
Audible.com からの依頼によって特別に執筆された Audible オリジナル作品であり、オーディブル会員に対しては無料で公開されたことから、作品の再生数は途方もない回数に上ります。
オーディブルのフィクション部門で週刊ランキング2位に達したことがあり、オーディブル編集部が選ぶ「今年のトップ20作品」にも長期間リスト入りしていました。
正確な再生数は表示がないので判らないものの、総レビュー数がなんと20000件に達していることから、どれほど多くの人が聴いたかを伺うことができます(全体的な評価もとても高いですね)。なんといっても、日本とは比較にならないほど米国ではオーディオブックを聴く人が多いのです。これはおそらく車社会だからということが大きい――毎日の車での通勤通学時間を「耳で読書する」時間に充てているわけです。

次に、本書のあらすじです。ここは宣伝句的な部分でありネタバレは少な目、主に冒頭部のみに触れています。

◇あらすじ(アンドリュー・ロウ氏の ブログ より)
世界は繰り返している――歴史の環を。
諸国を蹂躙し焦土と化す、魔王の軍勢。人類の敗退の百年目に勇者は生まれる。
伝説の勇者が必ず助けてくれる。人々はそう信じ、勇者は実際に世界を救ってきた。何十回も、何百回も。
そう、これまでは。
今回はちょっとだけ問題がある。魔王の侵攻の二十三年目。すでに世界の半分以上が奪われた。勇者の再臨を待っていたら、救ってもらうはずの世界なんて、どこにもなくなってしまう。
そこで本書の主人公、ユウ・シャアは旅立ったのだ。10のステップで誰でも簡単に世界を救える、すばらしい計画とともに。
勇者の剣をどうにかして手に入れる。誰もとらない職業をとる。レベルを上げる。スキルを増やす。勇者以外には絶対にクリアできないよう入念に設計された迷宮をクリアする。運が良ければ、妖精だって仲間になるかも。
ユウ・シャアは勇者ではない。でも、十分に長いあいだ、勇者のふりを続けることができたら……
世界を救うことだって、できるかもしれない。

いやー何でしょう、ゲーム世界を舞台としたライトノベル作品がごまんと溢れかえっている日本においては、いや英語圏の LitRPG ジャンルにおいてさえ、いまやだいぶありふれた設定と言わざるを得ないのですが、私はもうこのあらすじを読んだだけで泣きそうです。偽物が偽物のまま活躍する物語。偽物が本物「になる」物語、いや、偽物が偽物のまま本物「である」物語。うう……最高すぎる。

今回はここまでとし、次回から内容についてももう少し触れるほか、作品周辺のことについても紹介していこうと思います。アンドリュー・ロウ氏という作家について、LitRPGとはどんなジャンルなのか、ロウ氏の他の作品はどんなものなのか、まだまだ説明したいことがたくさんあります。

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